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今週の言葉(『日経ビジネス』の有訓無訓から) 2014.08.25

海外での成功のカギは「人」
実績や技術力だけでは
サポートは得られない


中村 紘子(なかむら・ひろこ)氏
[ピアニスト]




 橋本龍太郎政権時代の1997年、設立間もない

 浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を

 任されました。そこで私も、多くの国際コンクール

 に携わった経験を生かして、かなり思い切った

 改革をしました。審査員から極力日本人を解除し、

 参加者の年齢制限の下限をなくしたのです。


 2009年に職を辞したのですが、あの時の判断は

 間違っていなかったと思っています。

 「浜松」の名前は海外でも広く認知されましたし、

 コンクールからは内外の俊英が多数巣立って

 いきました。第4回で2位に入った上原彩子さんは

 2年後にチャイコフスキー国際コンクールで

 日本人初の1位に輝き、その後の活躍はご存じ

 の通りです。


 海外でのビジネスにおいて重要なのは、相手や

 その国を理解しようとする真摯な思い。

 技術に自信があり、実績があっても、現地の言葉も

 話せないまま海外に出ていくのは無謀だと思います。

 実際、欧州で活躍している日本人アーティストは、

 小学生から中学生くらいで渡欧しているのでドイツ語

 やフランス語がネーティブのように話せ、現地で様々な

 人からサポートを得ています。

 クラシックは国の文化と格調のシンボルであり、

 時に国家の威信をかけた場ともなります。


 失われた20年の後、状況は様変わりしました。

 成熟社会では才能ある人ほど将来設計を考え、

 弾き手ではなく聴き手の側に回ってしまうのです。

 こうした傾向は昨今の米国や、本場のドイツでも

 顕著。代わりに台頭してきたのが、中国や韓国、

 旧ソ連といった国々の演奏家たちです。


 豊かで平和な日本に生まれ育ち、ハングリー精神

 とはあまり縁のない日本の若いピアニストたちに

 今必要なのは、こうした隣人たちのアグレッシブさ

 かもしれません。
 





中村さんは、
「審査員から極力日本人を解除し、参加者の
年齢制限の下限をなくしたのです」
と語っていますが、その理由はこうしたことです。


 審査員が自分の大学の学生を大挙して参加

 させたり、教え子をゴリ押しで入賞させたり

 するようでは、コンクールの質は上がりません。

 一方、音楽的な才能が早熟であることは大脳

 生理学の研究からも明らかなのに、年齢制限を

 満たさずコンクールに出場できないために、

 可能性を秘めた子供たちが一流の指導者から

 手ほどきを受ける機会に恵まれないという現実

 もありました。
 



エゴと硬直的なルールがまかり通れば、クラシック
の世界に限らず、日本は世界から取り残されます。


中村さんは、今年デビュー55周年を迎えたそうです。
日本で著名なピアニストといえば、「中村紘子」さん
の名前が必ず挙げられます。


それは、半世紀以上にわたって第一線で活躍して
きたからです。それも世界という舞台で。


今読んでいる本(『大前研一 敗戦記』 大前研一
文藝春秋 1995年11月30日 初版発行)の中に、
次の一節があります。


 野茂に関してナイキのフィリップ・ナイト会長が

 面白いことを言っていた。

 「たしかに今の野茂を見ていると1985年頃の

 マイケル・ジョーダンを想い起こさせる。

 あの頃の彼は1試合ごとが驚き(サプライズ)

 で、まあすごい選手が出てきたものだ、という

 ことでバスケ業界を越えた注目を集めていた。

 しかし、そのような選手が、本物の(今日みる)

 マイケル・ジョーダン、スーパースターになる

 には少なくとも5年、いや10年そうした業績を

 続けなければいけない。サプライズとスーパー

 ヒーローの違いは時間だ。半年や1年でなく、

 5年、10年なのだ」
 



アーティストでも俳優でも、ネットビジネス業界の人間
でも、その他の世界でも、サプライズは出現します。


ところが、半年も経つと忘れられてしまう人が90%以上
います。1年経つと、残るのは数人に過ぎないことは
よくあります。


一方、10年、20年、30年と第一線で活躍し続ける
人たちも、ごくわずかながらいます。


この人たちは、スーパースターです。
簡単になれるものではないことが分かります。






Chopin Fantaisie-Impromptu Hiroko Nakamura
ショパン 幻想即興曲





Rachmaninoff Piano Concerto No.3 3rd.Mov. Hiroko Nakamura
(ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番第3楽章)




 


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藤巻隆(ふじまき・たかし)です。

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このブログは、30年近く年間購読している『日経ビジネス』の有訓無訓から印象に残った言葉をご紹介するブログです。

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『日経ビジネス』は週刊誌ですので、週に一度は必ずブログを更新します。その他、関連したことなどがあれば、掲載していく予定です。

よろしくお願いします。


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